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「FREAKS IN THE GARAGE - EP」
ライナーノーツ

ガレージ・パンクの魅力ってなんだろう。まず音楽そのものを考える前に、なんといっても言葉の響きが気持ち良い。ポップというかね、キャッチーでとても覚えやすい。「ガレージ・パンク」って口にするだけでも気分があがる。とてもワクワクする。

それでサウンドの魅力を端的に表すとすれば、「荒削りでカッコいい」ってことかな。例えば「ガレージ的」という形容があるならば、音が荒いとかラフだという意味になるだろう。文字にすると実に単純だが、仕上がりの綺麗なもの、カチッとしたものが好まれる我が国に於いては、この「荒削りでカッコいい」という感覚が根付きにくいイメージがある。でもだからこそ「荒削りでカッコいい」が映えるし、稀有で個性的となり得るのだ。自分自身、このような美的センスを意識するようになったのは、やはりガレージ・パンクに出会ったことが大きい。

荒削りの頂点ともいうべき、ガレージ・パンクの帝王The Sonicsに衝撃を受けてスタートしたバンドがTHE BAWDIESであることは、ファンの皆さんならよくご存知であろうが、そもそもワタクシ本人からしてガレージ・パンク道を歩むきっかけを作ってくれたのがThe Sonicsなのである。実際ボクとTHE BAWDIESは世代的に2回り開いている筈だが、根底にある気持ちは一緒。そんなバンドがメジャーなフィールドで活躍しているということ自体非常に立派なことだし、大きな意義があると感じている。そしてガレージ・パンクを発端にルーツ・ミュージックを探求し、先達に最大限の敬意を払う姿勢にも感服する。R&Bでもギター・インストゥルメンタルでもなんでもいいが、「荒削りでカッコいい」のはガレージ・パンクのみならずということを、肌でしっかりと感じている。そこが偉い。

この際だからついでに言わせてもらうと、ROYくんがツイッターで披露している自身のレコード・コレクションの凄さにも驚かされる。コレクターには目の毒な原盤多数で、圧巻の一言。課外活動のような場所で、音楽へのただならぬ愛情がじわじわと滲み出ている様は美しく、ボクのようなレコード・フリークなら何がなんでも贔屓したい気持ちにさせられる。
そんなTHE BAWDIESが改めてガレージ・パンクを真っ向から捉え直し、楽曲を拵えた。いわば原点回帰とも受けとれる作品がこの『FREAKS IN THE GARAGE – EP』なのだ。
いやもう、なんの迷いもなく完全に吹っ切れている。やりたいことを自由にやっているという様子がダイレクトに伝わる内容である。

1曲目「ROCKIN' FROM THE GRAVE」はガレージ・パンクの有名なコンピレーションから『Back From The Grave』を引用したであろうタイトルに思わずニヤリとさせられる。オープニングに相応しい、まさに痛快丸かじりの暴走ナンバー。ラフで性急なロックンロールを、畳み掛けるようにぶちかます。エナジーの放射を一気に前面から浴びて、こちらのテンションは上がりっ放しだ。
続く「STAND!」は、THE BAWDIES流のミッド60’sスタイルのガレージ・パンクと解釈したい。The 13th Floor Elevators「You're Gonna Miss Me」を連想させるギターのメロディで幕を開け、鬱屈としながらもダイナミックに曲が展開していく。うねるように変化する楽曲の構成も巧みで、絞るように歌うリード・ヴォーカルと、それに呼応する嘆きのようなコーラス。なだれ込むようなドラミング。ソリッドなベースライン。エキゾティックなムードのギター・ブレイク~シャープなカッティングなど聴きどころ満載。エンディングのスクリームも強烈なインパクトを残す。
2曲終わったところで、ウキウキするようなキャッチーでダンサブルなナンバー「PINCH ME」を不意にカマしてくれる。ワイルドな楽曲が占める本作において、ちょいと浮いた感じになるかといえばそうではなく、何故かホッとさせられ別の意味で愛着を感じさせてくれる。こういった楽曲を間に挟んで、作品に起伏を持たせる技量は大したもの。

そしてラストに強力なのが待ち構えていた。Mickey Hawks/ Moon Mullins And His Night Raidersの1958年の作品のカヴァーで、UKのロカビリー・クラブで頻繁にプレイされる、そちら界隈ではクラブヒットとして名高いナンバーなのだが、超絶ワイルドなブラック・ロックンロール・ヴァージョンへと見事昇華させている。ヴォーカルに至ってはオブスキュアな黒人シンガー、Screamin' Joe Nealが憑衣したようなダミ声で終始吠えまくっていて痛快この上なし。いわゆる60’sガレージとは異なる曲調だが、「荒削りでカッコいい」の本質を的確に捉えた好サンプルといえよう。トータルタイム1分30秒という短さにも驚嘆すべし。ROYくんの「ブラック・ロックンロール好き」はよく知られたところ。となれば、そもそも最初からこれが演りたかったんでしょ?とツッコミたくもなったりする。

ああ、まったくといっていいほどにご機嫌な快作だ。6月からのツアーで、これらの楽曲がナマで聴けるだなんて幸せである。生々しくもストレートな音源ではあるけれど、この作品を折角手にしたのなら、「荒削りでカッコいい」とはどういうことか、改めて考えつつマキシマムなヴォリュームで楽しんでもらいたい。

関口 弘(FRATHOP Records)
パンクをルーツに持ちながらも、ガレージ・パンク、サーフ、ロックンロール、ブルース、R&B、ドゥーワップといった50〜60年代の音楽を好んでプレイする選曲家。 ヴィンテージ・メイルオーダー・レコード・ストア、FRATHOP Recordsのオーナーでもある。
関口氏 著書のディスクガイド「GARAGE PUNK」は、THE BAWDIESがガレージ・パンクの世界へのめり込むキッカケとなった名著である。